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関西方式の持ち回り保証金

関東と関西では文化や習慣、風習などがよく違うと言われていますが、賃貸マンションや賃貸ビルなどの不動産売買においてもテナントからの預かり保証金を決済せずに引き継ぐということが行われるようです。それは「関西のやり方」ということで済めばいいのですが、税務上の扱いで気をつけなければならないことがあります。

具体例としてA社がB社に土地付きの商業ビルを10億円で売却すると仮定します。ビルにはテナントが入っており、その預かり保証金が2億円あるとして、この売買をそれぞれの会社における仕訳で考えてみると、
・商業ビルそのものの売買
 A社:現金預金 10億/土地建物 10億
 B社:土地建物 10億/現金預金 10億
・預かり保証金の精算
 A社:預かり保証金 2億/現金預金 2億
 B社:現金預金 2億/預かり保証金 2億
となります。(ただし売却益や家賃の精算等については考慮しないものとします)

関西方式では保証金は持ち回りが多いため、契約書には預かり保証金の記載がなく、A社は10憶の価値の資産を手放し、2億の負債も無くなることから、売買契約上の価額は8億として
 A社:現金預金 8億/土地建物 8億
 B社:土地建物 8億/現金預金 8億
という仕訳だけを行ってしまいそうですが、関東・関西どちらのやり方でも税務上の売買価額は変わりませんので、上記の仕訳に
 A社:預かり保証金 2億/土地建物 2億
 B社:土地建物 2億/預かり保証金 2億
の仕訳を追加しなければなりません。もし売買価額8億だけの経理処理をしているのであれば、次の問題が生じると予想されます。

・A社
1.貸借対照表の預かり保証金が試算表上に残ったままになる
2.売買価額が過少となるため、売却益も過少となり法人税と消費税も過少申告となる可能性がある
・B社
1.購入時に預かり保証金の認識がないため、テナントが出た場合には自腹で保証金を返さなくてはならない
2.購入時の土地建物の価格が過少となるため建物部分の消費税控除が少なくなり、減価償却の算入金額も少なくなる
3.購入原価が低くなるため、将来売却の際の譲渡利益が増えることになる

どのようなやり方をしても税務上の考え方は変わらないため、どちらの方式を取っても税額が増減することはありません。また賃貸物件を所有しているのに預かり保証金の記載が貸借対照表に無いということは、土地建物の価額も正しく記載されていないことになります。

テナント(賃借人)付き不動産の売買では、資産も負債も同時に異動することになりますので、契約書にもそれらの決済内容を明記した方が、双方にとって後々のトラブルが少なくなるように思います。

 

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